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2007年のワースト雑誌記事

「赤福「冤罪」論を提起する」イラスト

「赤福「冤罪」論を提起する」長谷川ひろし AERA(アエラ) 2007.12.3号 朝日新聞社 33〜35頁

赤福冤罪論が成立していない内容

 この「赤福「冤罪」論を提起する」(AERA(アエラ) 2007.12.3号)の記事を、当WEBマガジンは、2007年最低の雑誌記事に選んだ。理由は、この後に詳しく述べるとおりだが、赤福の偽装事件「JAS法及び食品衛生法違反事件」自体を2007年の最低の事件とは全く思わない。皆様もご存知のとおり、世界は最低の事件で満ち溢れている。最低な事件であっても最高の記事は存在する。多くの最高の記事は、隠されていた最低の事件を世界の目に晒すものだ。そして、文章の力と読者の理性で最低の事件を解決の方向に向かわせるパワーを持っている。
 最低の記事は、真実を隠しセンセーショナルな見出しだけを書くことが多い。その記事を読んだ後には読者の誤解が残る。この赤福「冤罪」論は、赤福によるJAS法違反が発覚した翌日の平成19(2007)年10月13日の時点で読者に提起されていたのなら少しは意味もあろうが、それでも10月12日の赤福のJAS法違反発覚当初に限って考えてみても、発覚した2つの違反行為の内、1つについては冤罪の論拠を全く示さない。その上、10月12日以降に明らかになった、赤福による食品衛生法違反行為については冤罪の論拠どころか、違反事実については、直接は一つも触れずに記事を結んでいる。
 こんな内容の記事で赤福冤罪論は成立するのだろうか。平成19(2007)年11月末の時点でジャーナリストが公にする内容ではない。自分の日記にでも書くべき内容だ。

言いがかりといったレベル

 これらは新官庁用語なのか。中村啓一農林水産省消費・安全局食品表示・規格監視室長は、
「消費者を裏切る行為だ」
「消費者に嘘をいってはいけない」
「消費者の目線でやります」
 などと、しきりに「消費者」を口にし、三重県伊勢市の株式会社赤福を論難する。そこが製造、販売している赤福餅の製造年月日が後述の農水省発表で「改竄」と断じられ、これを受けてメディアが一斉に「偽装」と報じた事件を巡っての発言である。…

 このテンションの高い書き出しから始まる『「赤福」冤罪論を提起する』を書く長谷川ひろし記者は、要は、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律、以下「JAS法」)に基づく加工食品表示基準第6条の(3)の農林水産省による解釈に疑問を呈する。
 そして、JAS法は専門外である食品衛生法関係の三重県当局幹部A氏(A氏は当局者ではあるが、農水省発表を受けてのメディアの赤福非難が激しい現在では、AERA編集部の判断で匿名にしたそうだ)の見解を援用し、同じ内容、品質の物に関しては、つまり品質が変わらなければ、いつまででも製造年月日を後に延ばして表示してもその行為は正当との論理を展開する。赤福の事例に当てはめれば、一度、製造年月日を表示したものをいくら書き直しても品質さえ変化しなければJAS法上問題がないと主張する。まず、法解釈の問題なので、法解釈の基本通り、JAS法の第一条で法の目的を読んでみる。

農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律 (昭和二十五年五月十一日法律第百七十五号)
(法律の目的)
第一条 この法律は、適正かつ合理的な農林物資の規格を制定し、これを普及させることによつて、農林物資の品質の改善、生産の合理化、取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図るとともに、農林物資の品質に関する適正な表示を行なわせることによつて一般消費者の選択に資し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

 「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」いわゆるJAS法が「…適正な表示を行なわせることによって一般消費者の選択に資し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする」以上、「消費者の目線でやります」と「消費者」を口にする農水省当局者の発言は、JAS法上の要請であり当たり前のことである。長谷川記者は、条文も読まずに、法を解釈し、記事を書いているのだろうか。書き出しからして言いがかりとしか思えないこの調子である。内容が的外れになるのもいたしかたないものとのあきらめもつく。言うまでもないが、法律は、何らかの目的があり施行される。各条文はその目的を達成するために存在する。わが国では、長年、産業育成を優先する政策を採ってきた。産業振興にばかり目が向いていた農水省の「消費者重視」への姿勢の変化は本来歓迎されるべきことではないだろうか。
 このAERA記事は、JAS法上の問題と食品衛生法上の問題を混同しており、後で必要となるので、先に、厚生労働省の管轄する食品衛生法の第一条の目的条項も読んで欲しい。

食品衛生法 (昭和二十二年十二月二十四日法律第二百三十三号)
第一条  この法律は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする。

 この両条文を読むと目的が異なることが分るし、JAS法には、直接「表示」「一般消費者」という言葉が入っているが、食品衛生法には入っていない。

読者の判断に大きな影響を与える事実を記者が書かないことについて

 このAERAの記事は、解凍日イコール製造日で問題ないと主張する。この一点のみを取り上げて赤福は冤罪として記事を構成している。その上、以下に示す読者の判断に大きく関わる重要な事実をワザと告げずに結論を導き出している。
 アメリカの新聞社ワシントン・ポストの<基準と倫理>は「ある重要な事実や有意な事実を欠落させた記事は、決して公正ではない。公正性は完全性を含むものである」と定めている。

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製造日の記載は法律上必要ないこと

 JAS法の規定により定められた「加工食品品質表示基準」(PDFファイル 新ページでリンク)第3条では、

(1) 名称
(2) 原材料名
(3) 内容量
(4) 賞味期限(品質が劣化しやすい食品の場合 消費期限)
(5) 保存方法
(6) 製造業者等の氏名又は名称及び住所

を義務表示事項としている。JAS法上、「製造日」を記載する必要はないにも関わらず、赤福は製造日でなく「謹製」という言葉を使って解凍日を記載していた(赤福は店頭販売の売れ残りを回収しそのまま再包装して、再包装した日も「謹製日」として記載していたことも明らかになっている。)。記者は、製造日を決める自由云々を言う前に、製造日の記載は法による要求ではないことをまず読者に告げるべきだ。製造日は書く必要はないのになぜ赤福は書いたのか。解凍日を製造日と書くことは、少なくとも消費者の選択に資するとは思えない。

製造日という用語について

 製造日は書く必要がなくとも、賞味期限または消費期限は、表示する義務がある。その時、期限計算の起算日を、慣例上「製造日」と表現している(例えば、『加工食品に関する共通Q&A(第2集:期限表示について)』厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課 農林水産省消費・安全局表示・規格課 Q3 イメージ図など)。品質がほぼ変わらないのであるのなら、解凍日を、賞味、消費期限計算の起点日とすることは合理的な考え方である。しかし、期限計算の起算日を必ずしも「製造日」として表示し、消費者に示すことが正しいとは思えない。もともと、食品保存技術が発達し、製造から長期間品質を保持できるようになったにもかかわらず、製造日表示を義務付けると、賞味期限が1年後であっても、消費者は、1日、1ヶ月でも製造日が新しいものを購入し、十分に賞味期限が残っているにもかかわらず売れ残りや返品になるなどの弊害が生じることがあるので、平成7年4月に消費・賞味期限、品質保持期限(後に「消費・賞味期限」に用語統一され廃止)の表示となった経緯がある。

JAS法と食品衛生法上の不正表示の考え方の違い

 不正表示についてJAS法は、「加工食品品質表示基準」(PDFファイル 新ページでリンク)で以下のように定める。

第6条 次に掲げる事項は、これを表示してはならない。
(1) 第3条の規定により表示すべき事項の内容と矛盾する用語
(2) 産地名を示す表示であって、産地名の意味を誤認させるような表示
(3) その他内容物を誤認させるような文字、絵、写真その他の表示
(4) 屋根型紙パック容器の上端の一部を一箇所切り欠いた表示(別表5の左欄に掲げる加工食品について、同表の右欄に掲げる方法により表示する場合を除く。)

対し、食品衛生法は、その第二十条で

第二十条  食品、添加物、器具又は容器包装に関しては、公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしてはならない。

と定める。JAS法の不正表示基準の方が厳しい。例えば、新鮮な食品に、加工食品品質表示基準6条の(2)「産地名の意味を誤認させるような表示」をしても、お腹を壊すわけでもなく、食品衛生法20条の「公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示」には当たらない。それは、先に挙げたJAS法と食品衛生法の1条を見れば分るように、法の目的が異なることからも分る。語弊を恐れずに言えば、JAS法上の不正表示違反は自分の不正な利益のために嘘を犯す「商売人として許されない」と言った違反であり、食品衛生法上の不正表示違反は自分の不正な利益のためにお客様の健康、生命に危害を及ぼす嘘を犯す「人間として許されない」と言った違反である。だからといって、後に書くように、JAS法の表示違反は、製造販売者と消費者の 当事者間の二者の関係にとどまらず、社会全体の進歩に悪影響を及ぼす重大な違反でもある。
今回の赤福の行為、解凍日イコール製造日とすること自体を直ちに、公衆衛生に危害及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示と解釈する人間はどこにもいない(であろう)。だからといって、食品衛生法上不正表示の違反がないから、JAS法上も問題なしとは言えない。

三重県への批判と三重県当局が記者会見で語っていたこと

まず、AERAの記事が、赤福冤罪論の主な論拠としている次の食品衛生法関係の三重県当局幹部A氏と長谷川記者のインタビューを読んで欲しい。

記者 赤福が赤福餅の解凍日を製造日としたのは製造日の改竄でJAS法の加工食品品質表示基準の違反であると農水省は赤福を断罪したが、安全関係の食品衛生法を所管する立場からはどうみているか(食品衛生法の権限は現在大幅に自治体に移されている)。

A氏 (食品衛生法上は)解凍日を赤福餅の製造日として全く問題ない。改竄でも偽装でもない。管轄外ではあるが、JAS法からみてもこれが違反とは夢にも思っていなかった。いまもそうだ。

記者 なぜか。

A氏 赤福餅には、その出荷形態に応じた製造工程がある。餅に餡をつけてすぐ包装して出荷する流れもあるし、日々の需給に対応出来るようにいったん冷凍状態にし、出荷の際に解凍し、包装し直す場合もある。その関係は冷解凍、再包装の工程を経た時が製造終了時点になる。

記者 冷解凍の前と後で赤福餅の品質は同じか。変わるのではないか

A氏 以前から冷解凍技術は進んでおり、赤福の場合も品質に何ら変わりはない。実際の食味などによってもそれは実証されていると知らされている。冷解凍の前も後も同じ品質の同じ赤福餅ということだ(赤福によれば、赤福での冷解凍はマイナス35度で急速冷凍処理をして保存し、およそ1週間内に釣80度のスチーム環境の中で45〜50分程度の時間をかけて解凍する。農水省系外郭機関でこの条件の試験をしてみたところ、品質に何の変化もなかった)。

「無茶がまかり通った」

記者 冷解凍の前も後も赤福餅に変わりがないなら、農水省の行為をどう捉えるか。

A氏 そもそも企業の製造日を農水省がどうして勝手に決められるのか。自分らが考える製造日でないから違法だと、そんな無茶苦茶なことが罷り通ってしまった。農水省は各メーカーの所に行って、お前の所の製造日はここだとかそんなことをいちいち命令しているのか。そうだとしたら、そのことこそが重大問題ではないか。

次に、三重県の対応について書かれた2つの朝日新聞記事を見て欲しい。

赤福・JAS法違反 「指導窓口」機能せず 伊勢保健所 偽装見落とす

 三重県は2003年度から、食品衛生法と日本農林規格(JAS)法の両方に関係する食品表示について、伊勢市などを担当する伊勢保健所に指導相談部署を設置していながら、JAS法に関して機能していなかった。そして、「県は、偽装発覚受けた12日の会見などで…JAS法上の直接的な管轄は農水省だとして、「県は管轄外」と説明していた。」、また、「大市喬・(三重)県薬務食品室長は「両方にまたがる部署を設置しても、保健所にとってはJAS法は専門外。主に相談を受けた場合の窓口としての位置づけで、簡易な違反以外は発見できる態勢ではなかった」と話している。」と報じていた。
(朝日新聞 名古屋版 2007年10月16日朝刊)

食品衛生法違反問題 県、甘かった赤福調査
「回収・再利用ない」一転 再発防止策示せぬまま

店頭に並べて売れ残った商品を回収し、再利用していたことが明らかになった赤福(伊勢市)の食品衛生法違反問題。当初、「同法違反の事例はない」と断言していた県の姿勢や調査能力にも大きな疑問符がつく結果になった。19日の会見で、県幹部は「我々の調査力が足りなかった」とうつむく…うつむきながら話す県関係者に、記者会見では、県の責任を問う質問が相次いだ。…(月舘彩子)
「後から次々、大問題」知事
野呂昭彦知事は19日、緊急の記者会見で、…JAS法と食品衛生法を担当する部が分かれていることにも触れ、「早急に改めるべきは改める」などとした。その上で、「県としても、(食品衛生法違反を)見抜けなかったということは申し訳ないこと」と釈明した。(藤木健)
(朝日新聞 三重県版 2007年10月20日朝刊)

10月12日の会見では、三重県は自己の責任を逃れるためにJAS法について「県は管轄外」と答えた。10月19日の会見にも上記食品衛生法関係の三重県当局の幹部であるA氏は(本当に幹部であるなら)参加していたのであろう。県による記者会見という国民の知る権利に直結する場では、JAS法は「県は管轄外」と答え(10月12日)、食品衛生法違反をも見過ごした責任追及の質問にはうつむいていたであろうA氏(10月19日)は、長谷川記者の質問には、

A氏 (食品衛生法上は)解凍日を赤福餅の製造日として全く問題ない。改竄でも偽装でもない。管轄外ではあるが、JAS法からみてもこれが違反とは夢にも思っていなかった。いまもそうだ。

と答える。責任追及の場では管轄外といって責任を逃れてうつむき、自分の職責とは無関係に、管轄外で、専門外(大市喬・三重県薬務食品室長の話し 前掲10月16日付朝日新聞記事)のJAS法についての見解を堂々と記者に披露する、三重県食品衛生法関係の幹部A氏のインタビューのどこに真実があるのか。

A氏 そもそも企業の製造日を農水省がどうして勝手に決められるのか。自分らが考える製造日でないから違法だと、そんな無茶苦茶なことが罷り通ってしまった。農水省は各メーカーの所に行って、お前の所の製造日はここだとかそんなことをいちいち命令しているのか。そうだとしたら、そのことこそが重大問題ではないか。

との脱線したちょっと正気とは思えないA氏の見解など、記者会見でうつむいていたA氏の憂さ晴らしのただの負け惜しみの戯言もしくは、酒の席の発言でなければ(事前規制も事後規制もごちゃ混ぜにした妙なレトリックを本気で考えているのなら)、行政担当者(幹部?)としての低い見識に驚く。
 こんな正気で語っているとは思えないゴミ同然のインタビューを援用する「赤福冤罪」論とは何なのか。
 A氏を匿名にしたのは、現在(2007年11月末)の農水省発表を受けてのメディアの赤福非難が激しいとの理由からのAERA編集部の判断であるという。2008年になれば、赤福への激しい非難も必ず沈静化する。その時、A氏の名前が明かされる日が来るのだろうか。少なくとも、A氏が、大市喬・三重県薬務食品室長でなければいいがと思うが、真実はどうなのだろうか。もちろん、A氏自らが、三重県食品衛生法関係の幹部の名誉の為に自らの名を堂々と名乗ることも可能だ。酒の席の愚痴を長谷川記者が記事に書いたならそのように発表すればいいし、本気でインタビューの内容が正しいと考えているのなら、行政当局者として、会見の内容と180度異なる自らの発言の説明責任を果たすべきだ。A氏と長谷川記者に問いたいのだが、行政当局者にとって記者会見は建前で、記者との個人対個人(行政当局者としてのアカンタビリティゼロ)の会話が本音だと言うのならそんな無責任極まる行政当局者を生む社会が本来あるべき姿なのだろうか。もしそれが実情であるなら、「赤福の食品偽装事件」などでなく、真実が語られない地方自治体の記者会見方法を含む、記者クラブ制度問題について長谷川記者は書くべきだろう。

赤福の冷解凍と品質試験について

 長谷川記者は、三重県の食品衛生法関係幹部A氏の「赤福の場合も品質に何ら変わりはない。実際の食味などによってもそれは実証されている」との、「食味など」というあいまいな説明に、以下の読者にとって、検証不可能な赤福側の主張を滑り込ませ、冷解凍によって品質に変化がなかったと主張する。

赤福によれば、赤福での冷解凍はマイナス35度で急速冷凍処理をして保存し、およそ1週間内に釣80度のスチーム環境の中で45〜50分程度の時間をかけて解凍する。農水省系外郭機関でこの条件の試験をしてみたところ、品質に何の変化もなかった

上記が、赤福による調査への偽証(売れ残りの賞味期限切れ商品の再販売)が判明した後の言い分であるかどうかは分らない(赤福の浜田典保社長は10月12日会見を開きそのようなことは「断じてない」と述べていた(朝日新聞 名古屋版 2007年10月19日))、ただ、赤福JAS法違反事件発覚の10月12日時点であっても赤福の冷凍は以下の5パターンがあった。

a.製造後そのまま冷凍庫に入れたもの。

b.本社工場内の製品ストック場に置かれ工場から出荷しなかった分を冷凍庫に入れたもの。

c.本社工場から出荷され、配送車が各販売店を回り本社工場に戻った時点で残った分を製品ストック場に入れた後に冷凍庫に入れたもの。

d.本社工場から大阪工場に配送した半製品(餡・餅)を使用して大阪工場で製造し冷凍庫に入れたもの。

e.本社工場から大阪工場に出荷され、大阪工場が配送車で各販売店を回り大阪工場に戻った時点で残った分を冷凍庫に入れたもの。

この5パターンの全てで、製造、包装時、製造年月日、消費期限のスタンプは押された状態で冷凍されていた。解凍時に、包装は破棄され、再包装し新しい製造日がスタンプされた(いわゆる「まき直し」)。

 記事に書かれている赤福による農水省系外郭機関での試験とは、上記5パターンの内どのパターンで試験したのだろうか、条件が悪いc.eパターンの一度工場出荷したもので、試験をしたであろうか。また、赤福の言う「品質」には、官能試験のみではなく、微生物試験、理化学試験が含まれているのかも分らない。そもそも、A氏も出席したであろう10月19日の会見で、伊勢保健所の田畑好基所長は「『(赤福から)出された報告書の(食品衛生法上の)違法、適法を吟味することだけで、書類の内容について疑うことなく調査をしていた』と述べ、『大きな反省材料』とした。(朝日新聞 三重県版 2007年10月20日)」、三重県の食品衛生法関係幹部A氏の発言に赤福の言い分を疑うことなくそのままつなげる長谷川記者の編集は、皮肉が利いてはいるが不適切である(A氏は赤福の言い分を代弁していると考えられるので、どうやらA氏が伊勢保健所の田畑好基所長でないことは分る。)。
   また、読者にとってこの赤福の言い分は全く検証不可能であり、冷解凍しても赤福の品質の変わらないことの何の証拠にもなっていない。

赤福の自社ウェブサイトの表記

 赤福は自社のウェブサイト上で、「『製造したその日限りでの販売』『作ったその日の内に味わっていただく』という創業以来の基本理念」と宣伝していた。
 創業以来の基本理念を守るつもりなら、創業時には存在しなかった冷凍技術を導入すべきでなかったし、解凍することは、作ることではない。先に説明したとおり、消費・賞味期限の起算日という意味に限定して解凍日を製造日と言うことはできるが、解凍日は、赤福が宣伝していた『作ったその日…』ではない。
 「農水省は、…同社(赤福)がホームページ上で「作ったその日の内に味わっていただく」と作りたてであるかのように表記していた点も、消費者に誤解を与える行為として重視している。」(朝日新聞 名古屋版 2007年10月16日)と報じていた。
 朝日新聞の報道が正しければ、赤福のウェブサイト上の表記も農林水産省の加工食品品質表示基準6条の(3)の解釈に何らかの影響を与えたようだ。
 農林水産省の法解釈に異を唱えるのなら、長谷川記者も『作ったその日の内に味わっていただく』と赤福がウェブサイト上に記載していたことを読者の法解釈の助けになるように記事に掲載するべきである。ウェブサイトの表記は、加工食品品質表示基準6条の(3)の解釈に用いるべきではないと考えるのなら、上記の赤福のウェブサイトの表記を読者に示した上で、農林水産省の食品表示のみにとどまらず広く製造販売業者の活動にまで及ぶ法解釈を批判すべきである(この件については「残された問題」として後述したい。)。

赤福が冤罪であった可能性のある時点が全く存在しないこと

 この赤福「冤罪」論を提起するを初めて目にしたとき、冤罪を立証する何かの新事実が書かれているものと期待したが、新しい材料は、三重県の食品衛生法関係幹部A氏の無責任発言だけで、赤福の冤罪につながる新事実は何も書かれず。逆に読者の判断にとって重要な色々な事実は、読者の目に隠され赤福の冤罪という無理な結論にミスリードする内容となっていた。
 新事実がないとしてもどこかの時点では、まだ冤罪と言える可能性のある時点があり、例えば、違反と言えるのが、農林水産省の加工食品品質表示基準6条の(3)の解釈の問題だけであるならば、赤福「冤罪」論を提起する意味もある。
 しかし、今回の赤福の違反事件は、長谷川記者も書くとおり、10月12日の発覚時点から、農林水産省の加工食品品質表示基準6条の(3)違反とともに、加工食品品質表示基準4条第1項第2号アの規定に違反していたことも発表されている。正しくは、使用した原材料の重量順に「砂糖、小豆、もち米」と表示すべきところ、赤福は「小豆、もち米、砂糖」と表示していた。

加工食品品質表示基準」(PDFファイル 新ページでリンク)
(表示の方法)
第4条
(2) 原材料名
使用した原材料を、ア及びイの区分により、次に定めるところにより記載すること。
ア 食品添加物以外の原材料は、原材料に占める重量の割合の多いものから順に、その最も一般的な名称をもって記載すること。

 長谷川記者は、赤福の表示順の違反について農水省が発表したとだけ書いている。この違反について自らの見解を全く書いていない。タイトルを見れば、「冤罪」論なのだから、この件も冤罪であると考えているのかもしれない。もしも赤福「冤罪」論とタイトルに入れるのならこの表示違反について無実であるとの論証を行うべきである(ただし、赤福自体が違反を10月12日の時点で認めている。)。
 もしくは、とるに足らない違反と考えているのだろう。
 しかし、メタボリック症候群が社会問題となる現代において、原材料に対する消費者の関心は高く、この表示違反はとるに足らないものでは決してない。肥満を起因とする成人病が気になる消費者にとって、なるべく砂糖などカロリーが高い食品の摂取を少なくしたいものである。小豆より砂糖の量を抑えたこしあんには、ヘルシーなイメージもある。品質が同じで、原材料「小豆、もち米、砂糖」と書かれたものと「砂糖、小豆、もち米」と書かれたものが並んでいれば前者に手が伸びる消費者は多いであろう。特に、砂糖の摂取を抑える必要のある健康上に問題を抱える消費者(弱者)ほど、小さな原材料表示に目をこらして商品を選択している。
 また、社会全体に与えた悪影響も看過できない。小豆の量より砂糖の量を少なくしても品質が変わらない新こしあん製造法を考案しそれを正直に表示したとしても、赤福のように、嘘をついて不正表示したものがいれば、新こしあん製造法考案者は、考案者が本来受取るべき考案の対価としての利益を受取ることはできない。社会が新考案の発案者に対してインセンティブ(報奨)を与えない場合、コストのかかる新考案を行うものは誰もいなくなり、社会全体のダイナミズムがそがれ停滞につながっていく。
 今回の記事のタイトルが、赤福「冤罪」論の『提起』である以上は、長谷川記者は、更なる検証を行い、赤福の表示基準4条第1項第2号ア違反も冤罪であるとの内容を記事にする可能性はある。しかし、4条1項2号ア違反についてこのまま何も語られなければ、違反事件発覚以来、どの時点に戻っても、JAS法違反について、赤福が冤罪であったとする可能性が一切ない状況での赤福「冤罪」論は、記者の妄想としか思えない。深刻な社会問題に対し、売らんかなの姿勢で記事のタイトルを付けるイエロージャーナリズムの手法ではないかと言ったら言い過ぎだろうか。

長谷川記者の論理

 上記に列挙した無理な論理からも基本的に政府(中央官庁)のやることは何でも反対という長谷川記者の基本姿勢が見てとれる。長谷川記者の主題はまさにここにあるのだろう。政府のやることに反対することは自由だ。公権力の乱用も許されない。政府の正当な行為について言いがかりに近い反対(私には思える)を行うことも自由である。色々な意見や主張を持つ自由は我が国の大切な価値の一つだ。しかし、条文も読まずに法解釈を行いそれで政府を論難することは、政府に対するカウンタパートとして余りに力不足で、長谷川記者の心配する権力の暴走を生む可能性につながっていくのではないかとほんの少しだけ心配になる。

農林水産省の5項目指示について

 長谷川記者は、「実は赤福は冤罪で、農水省の5項目指示こそ私企業経営への非合法介入で権力乱用の疑いがあるのではないか。」と明確に書く。長谷川記者の冤罪論は先に述べた通り、表示基準4条第1項第2号ア違反の冤罪を論証しない限り破綻した論理である。しかし、赤福が違反していても、私企業経営への非合法介入、権力乱用が起こった可能性は残る。
 私企業への『非合法』介入とは、法律に則さない行為ということであろうが、第一に、「指示」は、JAS法第19条の14第1項の規定に基づくもので非合法介入でもなんでもない。適法な行為である。適法な行為であっても権力の乱用はもちろん起こりえる。長谷川記者は「全商品の表示の点検・不適正な表示の是正など」の5項目の指示に権力乱用の疑いがあると言う。それでは、農林水産省の5項目の指示の内容を見てみよう。

株式会社赤福に対する指示の内容

1 株式会社赤福を表示責任者として販売しているすべての商品について、直ちに表示の点検を行い、不適正な表示の商品を発見した場合には、速やかに適正な表示に是正した上で販売すること。

2 株式会社赤福が、赤福餅に事実を誤認させるような製造年月日を表示したこと及び原材料名表示が重量の割合の多いものから順に表示しなかったことの主たる原因として、株式会社赤福における加工食品品質表示基準(平成12年3月31日農林水産省告示第513号)に対する認識不足があると考えざるを得ないことから、これを踏まえて、原因の究明・分析を行うこと。

3 2の結果を踏まえ、株式会社赤福において品質表示の考え方を見直す等の再発防止対策を実施すること。

4 株式会社赤福の全役員及び従業員に対して、品質表示についての啓発を行い、その遵守を徹底すること。

5 1から4に基づき講じた措置について、平成19年11月12日までに農林水産大臣あて提出すること。

 上記の指示をどのように考えるかは、人によって異なるとは思うが、こんな「違反」という言葉も一つもない穏やかな文書による指示が権力乱用とは考えにくい。さらに、JAS法の仕組み上(19条の14第3項)、正当な理由を提示できれば、上記の「指示」を無視しても罰せられることはない。逆に言えば、農林水産省は指示の不承諾のみを理由に指示先を罰することはできない。農林水産省にとって指示を出して相手方から反論をされ、万が一それが正当な反論だった場合の監督官庁としてのショックは計り知れないものがある。だから、制度上、農林水産省も慎重になる。「全商品の表示の点検・不適正な表示の是正など」は、当たり前の指示ではないだろうか。上記、5項目に権力乱用の疑いがあるとは考えられないし、まして長谷川記者の言う「農水省の対赤福強権発動」などでは断じて無いと言い切れる。
 また、赤福が恭順の意を表していることなどの理由について官尊民卑を言うが、赤福は「解凍日イコール製造日」と表記することは、JAS法上問題が無いと主張することは可能であったのにやらなかった。なぜか、その後、発覚した数々の不正行為を見れば明らかではないだろうか。自分達がやっていたことが露呈することを恐れ、低姿勢になっていたに過ぎない。

農林水産省10月22日付け発表について

長谷川記者は、以下のように農林水産省の10月22日付け発表に異を唱える。

赤福事件でもう一つ見落とせないのは、10月12日に続く農水省の10月22日付の発表だ。農水省によると、それは農水省質問への赤福回答を、さらに赤福への立ち入りによって確認してまとめたものというが、その発表文には次の部分が織り込まれている。
「赤福餅の店頭売れ残り返品について、餡(むきあん)と餅(むきもち)に分離し、本年1月までその大部分を再利用していたこと。具体的には餡については、平成12年まで一部を赤福餅の餡に再利用し、それ以降は、約50%を関連会社に販売していたこと。餅については、60%〜90%(平均68%)を赤福餅の餅に再利用していたこと」
 赤福餅の餡、餅の再利用それ自体はJAS法とは関係なく、三重県当局によれば消費期限内であれば食品衛生法でも問題ない。廃棄せずに再利用することはむしろ称賛されるべきことではないかと取材者は思うが、「JAS法違反」に関連した発表文の中にこの件がわざわざ挿入された。各巻偽装の続発で食品業者不信を募らされている消費者は「余りものを何事か」と煽られてやしないか。

 JAS法と関係ないことを発表して農林水産省が消費者を煽ったというのである。
 まず、第一に、赤福餅の餡、餅の再利用それ自体はJAS法とは関係ないとは言えない。そもそも、農林水産省の赤福への質問、検査は、全てJAS法に基づいて行われていることである。税金を使った検査について、どのようなことが判明したのかを発表するのは行政の検査を可視化することからも望ましいことではないか。検査の内容が発表されず、検査が密室化される方が、長谷川記者の言う権力の乱用や強権行使が心配される事態なのではないだろうか。
農林水産省の10月22日付け発表を朝日新聞(東京版 2007年10月22日夕刊)は次のような見出しで報じている

売れ残り餅、7割再利用 赤福、当初説明は「1%」

記事の内容は、売れ残りの餡と餅の再利用とともに、赤福が未出荷や売れ残りの商品を回収し、そのまま翌日の日付を製造日として刻印して再出荷していたこと(いわゆる「生まき直し」と赤福社内で呼んでいた違法行為[JAS法及び食品衛生法違反])。翌日の製造日を刻印して、消費期限を1日伸ばしていたこと(いわゆる「先付け」と赤福社内で呼んでいた違法行為[JAS法及び食品衛生法違反])。赤福餅に関し、冬期に糖類加工品(砂糖、植物性たん白及びトレハロースの加工品)を使用していたにもかかわらず、原材料に表示していなかったこと(JAS法違反)も同時に報じている。
 農林水産省の10月22日付けの発表を見ると、

5 その他
赤福餅の店頭売れ残り返品について、餡(むきあん)と餅(むきもち)に分離し、本年1月までその大部分を再利用していたこと。
具体的には
餡については、平成12年まで一部を赤福餅の餡に再利用し、それ以降は、約50%を関連会社に販売していたこと。
餅については、60%〜90%(平均68%)を赤福餅の餅に再利用していたこと。

と5番目の項目それも「その他」として発表している。別に売れ残り餅、あんの再利用を強調しているわけではない。「その他」の事項を「売れ残り餅、7割再利用」と見出しにして消費者を煽っているのは朝日新聞などのマスコミの方ではないだろうか。それに、「消費者は「余りものを何事か」と煽られてやしないか。」と長谷川記者は言うが、三重県健康福祉部も同じ22日に、赤福餅の餡、餅の再利用とそれに賞味期限の切れたものが含まれていたことを発表している(朝日新聞 名古屋版 2007年10月22日夕刊)。消費者は「余りものを何事か」と煽られているのではなく、「賞味期限切れの余りものを混ぜたら危険だろう」と怒っているのだ。
 この件でも三重県当局者の話しを長谷川記者は載せる「三重県当局によれば消費期限内であれば食品衛生法でも問題ない。」というが、三重県当局者の過度の縄張り意識から出た発言にすぎない。
 この件に関して発覚の当日(10月22日)から、原料に混ぜた、餡(むきあん)と餅(むきもち)に賞味期限が切れたものが含まれていたことを、三重県健康福祉部は発表している。「消費期限内であれば食品衛生法でも問題ない。」と書くのなら、「消費期限内であれば食品衛生法でも問題ないが、赤福の場合は賞味期限切れも含まれていた。」もしくは11月20日の三重県がまとめた報告書の内容に従い、「消費期限内であれば食品衛生法でも問題ないが、むきあん、むき餅を使用した赤福餅の多くは消費期限切れ。6月〜9月は大阪、名古屋エリアの全ての赤福餅(79%)が、消費期限を過ぎた後処理されていた。」と読者に分るように書くべきだ。ここでも、長谷川記者は読者をミスリードしている。

三重県等の赤福への営業禁止処分を公正とする論理破綻

 長谷川記者は、三重県等の赤福への営業禁止処分を以下のように解説する。ちなみに、以下の記事にある「今度の強権行使」とは、前掲の農林水産省の5項目指示のことである。

今度の強権行使との関連は測れないが、「その他内容物を誤認させるような……」という(加工食品品質表示基準)第6条(3)の表記も極めて曖昧で、どんな拡大解釈も可能だ。
 一方で赤福には、いったん出荷して返品された物も再冷解凍したりして消費期限を1日延ばして再出荷していた場合もあることが後で判明し、これについては、「科学的、合理的根拠なく」それをやったことを理由に食品衛生法違反で三重県、大阪市、名古屋市がそれぞれ赤福の本社、大阪、名古屋営業所を無期限営業禁止処分にし、改善計画の報告を待っている。消費期限には余裕を持たせているので、そうした日々の需給調整の苦心も十分に安全圏内で行われ、それも一部についてだけだったようだが、それでも食品衛生法担当当局の措置に限っては、ぎりぎりではあろうが公正を失してはいなかったと思われる。

 無期限営業禁止処分という、食中毒を発生させた加害者以外に適応されることは稀だというような重い行政処分が、「田畑好基・伊勢保健所長は…食中毒の発生以外「県内では記憶の範囲ではない」と話した。」(朝日新聞 名古屋版 2007年10月19日)という重い処分が、長谷川記者の主張する「消費期限には余裕を持たせているので、そうした日々の需給調整の苦心も十分に安全圏内で行われ、それも一部についてだけだったよう」な赤福に下されたのであるならば、これこそ権力乱用の恐れが強い強権行使というものだろう(ここでは、赤福の法律違反の偽装行為を「需給調整の苦心」と読者に伝える長谷川記者のジャーナリストとしての感覚は、真実を伝えようとする姿勢とは正反対のものだろうと指摘するに留める。ルールを守るものが、赤福のしたような日付を書き換えるというインチキではなく、本当の「需給調整の苦心」のためにいかに多大なコストと労力をかけているか、例えばお弁当などの廃棄ロスを減らすためコンビニエンスストアが、需要予測の情報システム構築にどれほどの時間と労力とコストをかけたのか(今現在も進行中である)を考えてみれば、赤福のやったことのどこに苦心があるのだろうか。安直で自分勝手な法律違反の偽装行為としか言えない。)。
 安全圏内なら、三重県、大阪市、名古屋市の無期限営業禁止処分は重すぎる。逆に、三重県、大阪市、名古屋市の無期限営業禁止処分が公正を失してはいないのなら、赤福のやったことは、無期限営業禁止という重い処分が必要なほど公衆衛生、食品衛生上有害なものであったというべきである。

食品衛生法は、

第五十五条
 都道府県知事は、営業者が第六条、第九条、第十条、第十一条第二項若しくは第三項、第十六条、第十八条第二項、第十九条第二項、第二十条、第二十五条第一項、第二十六条第四項、第四十八条第一項若しくは第五十条第三項の規定に違反した場合、第七条第一項から第三項まで、第八条第一項若しくは第十七条第一項の規定による禁止に違反した場合、第五十二条第二項第一号若しくは第三号に該当するに至つた場合又は同条第三項の規定による条件に違反した場合においては、同条第一項の許可を取り消し、又は営業の全部若しくは一部を禁止し、若しくは期間を定めて停止することができる。

と定めている。文末の「することができる。」は、一定の行為ができることを表す場合に用いられ、この場合は、「許可の取り消し」、「営業の禁止」、「営業の停止」の行為(行政処分)をするかしないかの裁量権を表している。赤福のしたことが安全圏の行為ならば、第十九条第二項、第五十条第三項の規定に違反した場合でも何の行政処分も受けない。統計を見ても「平成17年度 保健・衛生行政業務報告書」(厚生労働省大臣官房統計情報部)によれば平成17年度中に菓子(パンを含む。)製造業営業施設数136352に対し、営業禁止処分件数は4件という少数なものにとどまっている。
 長谷川記者の、赤福の違反行為は安全圏で、三重県、大阪市、名古屋市の無期限営業禁止処分が公正を失してはいないとの主張は、完全に論理破綻している。

結び

 「餡をつけた際と解凍の時とで赤福餅の内容、品質が同じなら、人々は「内容物を誤認」したことにはならない」から解凍日と製造日を同一とすることは、JAS法上の加工食品品質表示基準6条の(3)違反にならないのではないかとの長谷川記者の仮定に基づく問いかけの意味はあまり無い。
 冷凍は比較的「食品に与える影響(食品そのもの、または食品の品質を変化・変質させている)…は少ないとは言え強制的に温度変化を与えるのだから,製品(特に解凍後の製品)の品質に影響を与えないことはない.(「「レアショックフリーザー」の特長とその効果」古賀靖 「ジャパンフードサイエンス」 2005-5)」。
 長谷川記者の仮定は、厳密には成り立たないものである。「凍結過程は…食品内の氷結晶生成が食品の組織を破壊し凍結濃縮現象を起こし、タンパク質や他成分の科学平衡のバランスを崩し、結果として食品にとって不可逆的なダメージを与える(「食品と開発」Vol.42 NO.8 2007 26頁)」冷凍と解凍の間の期間は、保存期間であるというのが無理のない解釈ではないだろうか、つまり、解凍日は、製造日ではない。
 解凍日は、内容、品質がほぼ同じなら消費・賞味期限計算の起算日とすることができるが、任意表記事項である製造日の表示とはしないということが、JAS法の一条「…適正な表示を行なわせることによって一般消費者の選択に資し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的」に適う製造、販売事業者にとって安全な解釈ではないだろうか。

残された問題

「製造日」は「消費・賞味期限計算の起算日」という意味で使用すべきでない

 食品の任意表示のことは「そもそも「だましてやろう」とか「巧妙な表示をしてやろう」といった意図がなければ、不適正な表示は生まれない。表示する側が正直であれば、法律違反に問われることなどないはずである(「わかる食品表示[基礎とQ&A]」垣田達哉 2005 商業界 187頁)。」というほど単純なものではないと思う。この本の著者のように正々堂々とすることに価値を見出す人間だけが食品表示に携わるわけでもない。考えられる任意表示事項全てにガイドラインを設けるのも対象が多すぎて現実的とは思えない。ただ、「製造日」を「消費・賞味期限計算の起算日」という意味で使用すると、今回の記事に書かれている三重県の食品衛生関係幹部のA氏のように、「製造日」という文言をわざと混同させる者もでてくる。
「製造日」を「消費・賞味期限計算の起算日」という意味で使用しないように改めた方がよいのではないだろうか。

解凍日イコール製造日とすることをJAS法上適法とする可能性を残す

 この赤福JAS法違反事件の加工食品品質表示基準6条の(3)に関しての農林水産省の解釈は、なるべく狭い射程で捉えるべきと考える。解凍日を製造日として表示することを適法とする可能性も留保したい。赤福の単純な方法と異なる更に進んだ冷解凍技術が開発、または、現在使用されている可能性もある。駅のキオスクで売られるみやげに、謹製と製造日を書くことにクラス感や高級感を私は感じないが、赤福のこだわりを見るとみやげを売るには良い方法の一つなのだろう。社会全体の利益につながる新技術開発のインセンティブとして、単純に解凍日イコール製造日とすることを禁止せず表示することを適法とする可能性は残すべきだ。

表示基準6条の(3)の解釈にウェブサイト表記は加えるべきでない

 赤福の加工食品品質表示基準6条の(3)違反の解釈に、赤福のウェブサイト表記「『製造したその日限りでの販売』『作ったその日の内に味わっていただく』という創業以来の基本理念」を援用(朝日新聞の表現では『消費者に誤解を与える行為として重視』)した農林水産省の法解釈には、疑問が残る。赤福の場合、自社で製造販売しており、たまたま違反とされる表示を行った者と解釈に影響を及ぼすウェブサイトの所有管理者が同一だった。現在、クール宅配便を利用した『お取り寄せ』と呼ばれる食品の広告販売を行うウェブサイトは、数多く存在する。食品に品質表示する者とウェブサイトの表記を行う者が異なる例の方が多いと考えられる。ウェブサイトの表記が、表示基準違反の解釈に利用されると製造者は、自身の関知しない流通経路上についての責任を負う事になる。また、一般的に、ウェブサイト上の消費者に誤解を与える行為よりも、直接店頭などでの販売員によるセールストークの方が消費者に誤解を与える言動に溢れている。ウェブサイト上の表記は、24時間365日、いつでも手軽に閲覧でき確認が簡単であるが、全ての消費者がインターネットにアクセスできる環境に在るわけでもない、検査当局の確認(検査)の簡易性という理由からウェブサイトをJAS法上の解釈の対象に含めるべきではないと考える。
 JAS法の不正表示に関する検査対象は、あくまで加工食品の表示上に限るべきである。ウェブサイト上の不当な表記は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)の範疇であり、JAS法上の解釈に利用すべきでない。

自らの裁量権を収縮させる努力を

 前掲書「わかる食品表示」によれば、農林水産省の指示は公表されないこともあるという。指示を受ける業者にとって、指示を公表されるかどうかによる営業上の影響は大きいものがある。指示に先立つ検査の時点で、公表するかしないかの裁量権をチラつかせることによって検査に業者の協力を得て検査を円滑にすすめる効果があることは想像するに易い。
 しかし、恣意的な未公表を予防し、平等を旨とすべき法治行政を実現するためにも、また、JAS法が「…適正な表示を行なわせることによって一般消費者の選択に資し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的」である以上、JAS法を改正し、指示に関しては全件公表とすべきと考える。

最後に

 中央官庁の役人の中には、公言するかどうか別にして、地方分権の反対理由として、地方自治体の行政当局者の不勉強、ストレートに言えば「頭の悪さ」を挙げる人もいる。AERAの記事で明らかになった、三重県の食品衛生法関係幹部であるA氏の言動を見れば、同調者が増えそうな気配もある。
 ただ、長谷川記者によれば、A氏のような意見を言う専門家(取材対象)が、4、5人、正確には、22人の取材対象(河俣英人赤福総務部長を含む、行政、業界団体関係者、消費・安全問題運動家ら22人)に対し、4、5人は農水省への批判、不審を告げたという。
 別に、地方自治体の行政当局者だけが不勉強ということではあるまい。長谷川記者が、読者をミスリードしたのではなく、A氏がこのトンデモ話に長谷川記者をミスリードしたと考えてみればA氏の手腕には恐るべきものがある。赤福JAS法及び食品衛生法違反事件の沈静化後の、AERA編集部によるA氏の実名の公表が待たれる。

赤福事件の理解に役立つリンク

法令データ提供システム

http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi

農林水産省

株式会社赤福が販売した商品(商品名「赤福餅」)における不適正表示に対する措置について 平成19年10月12日

http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/kansa/071012.html

別紙2(株式会社赤福に対する指示の内容)(PDF:33KB)新ページでリンク

http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/kansa/pdf/071012-03.pdf

「赤福」に係る立入調査の結果概要について 平成19年10月22日

http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/kansa/071022_1.html

三重県

食品衛生法に基づく株式会社赤福の立入検査結果 平成19年10月23日

http://www.pref.mie.jp/TOPICS/2007100356.htm

株式会社赤福に対する指示事項及び調査報告について 平成19年11月20日

http://www.pref.mie.jp/TOPICS/2007110281.htm

「株式会社赤福」に関する調査報告書(PDF(24KB))新ページでリンク 平成19年11月20日

http://www.pref.mie.jp/TOPICS/200711028110.pdf

株式会社赤福

株式会社赤福

http://www.akafuku.co.jp/

2007年10月12日【お詫び】 2007年10月12日

http://www.akafuku.co.jp/release/20071012_01/

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