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食通

太宰治

 食通といふのは、大食ひの事をいふのだと聞いてゐる。私は、いまはさうでも無いけれども、かつて、非常な大食ひであつた。その時期には、私は自分を非常な食通だとばかり思つてゐた。友人の檀一雄などに、食通といふのは、大食ひの事をいふのだと真面目な顔をして教へて、おでんや等で、豆腐、がんもどき、大根、また豆腐といふやうな順序で際限も無く食べて見せると、檀君は眼を丸くして、君は余程の食通だねえ、と言つて感服したものであつた。伊馬鵜平君にも、私はその食通の定義を教へたのであるが、伊馬君は、みるみる喜色を満面に湛へ、ことによると、僕も食通かも知れぬ、と言つた。伊馬君とそれから五、六回、一緒に飲食したが、果して、まぎれもない大食通であつた。
 安くておいしいものを、たくさん食べられたら、これに越した事はないぢやないか。当り前の話だ。すなはち食通の奥義である。
 いつか新橋のおでんやで、若い男が、海老の鬼がら焼きを、箸で器用に剥いて、おかみに褒められ、てれるどころかいよいよ澄まして、またもや一つ、つるりとむいたが、実にみつともなかつた。非常に馬鹿に見えた。手で剥いたつて、いいぢやないか。ロシヤでは、ライスカレーでも、手で食べるさうだ。

「博浪沙」
昭和17年1月5日 7巻1号

檀一雄
だん かずお
1912-1976
山梨県生まれ。昭和期の小説家 代表作『火宅の人』など
伊馬鵜平
伊馬春部(いま はるべ)1908-1984
福岡県生まれ。昭和期の放送作家、歌人 鵜平は別名

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