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横浜の言葉 バックシャン

馬車道ガス灯

 10代の頃、横浜に住む友人が「バックシャン」という言葉を使った。知らない言葉だった。そんな言葉は聞いたことが無いと言うと横浜では普通に使う言葉だという。意味を聞くと「後ろ姿が美しいひと」と教えてくれた。女性の後ろ姿を評価する言葉を持っている横浜の友人を江戸時代の人のようだと思った。まるで浮世絵の世界のように感じた。
 それまで、自分自身あまり女性の後ろ姿を意識して見たことがなかった。どんなシュチューションで使うのか、しつこく聞いた覚えがある。どんなときに使うのか?見ず知らずの通りすがりの女性に使うのか?そんなことを聞いたが、その時、どんな答えを聞いたのかはあまり覚えていない。女の子に声をかけるときに使う言葉と聞いたかもしれない。なにか横浜の人には、独特な美的なセンスがあるような気がした。その後、会話の中で女性の後ろ姿を評価する機会がなく、声に出して「バックシャン」と言う必要性は無く使ったことは一度もなかった。その時以来、「バックシャン」は横浜の言葉とばかり思っていた。
 この前、辞書を引いて「バックシャン」が載っていることに驚いた、その上、英語のback(後ろ)とドイツ語のschön(美しい)を組み合わせた言葉と知ってさらに驚いた(日本国語大辞典 第二版 小学館)。もっと驚いたのは、広辞苑によれば、多くは顔が美しくなく後姿だけ美しい女性を指す言葉として使うと書かれていたことだ。友人から聞いたときに感じた江戸情緒はどこかに行ってしまった。確かに、英語とドイツ語の組み合わせは、いかにも隠語という感じはするが、「後ろ姿が美しい女性」だけでも、使い道が限られた言葉なのに更に「且つ、顔が美しくない」の意味も加わると使う機会は全くなさそうだ。驚きとともに、活字になっている内容にちょっと違和感を覚えた。バックシャンの「シャン」は、背筋をシャンとする(背筋を伸ばして姿勢を良くする)のシャンだと思っていたことにもあるかもしれない。

 同じような違和感を司馬遼太郎の街道をゆく「横浜散歩」でも覚えた。多くの人はこの作品のなかで司馬が、三島由紀夫の最高傑作を「午後の曳航」とあっさりとかいていることに違和感を覚えるかもしれないが、私は、まるで突然ふって湧いたように横浜という場所が開港したように書かれていることに違和感を覚えた。

 横浜の原型は、砂嘴(さし)である。
―横浜の開港は、1859年(安政六)である。
 それまでは、砂嘴の上にわずかな戸数の漁村があるにすぎなかった。といって背後に豊かな農村や大きな人口がひかえているわけではなかったから、魚をとったところでそれほどいい暮らしができたとはおもわれない。
―横浜の開港は、米国(代表・ハリス)と幕府のあいだで結ばれた日米修好通商条約(1858年・安政5)によるもので、条約面では、開港場は横浜ではなかった。神奈川であった。

 1859年の開港以前の横浜に何もなかったように書いているが、来年に控えた開港150周年を前に横浜でよく目にするペリー提督の横浜上陸(ハイネ画)は、それ以前の1854(安政元)年のことだ。
 画に描かれた玉楠(たまくす)の木は、今も横浜開港資料館の中庭に茂る(注)。歴史とは後世の人間にとっては取捨選択にすぎないが、分かりやすくするために、1854年のペリー提督の横浜上陸を書かずに、1859年の横浜開港を語るのは、少し正確性に欠けているのではないだろうか。
 特に、横浜の人は、長く横浜開港資料館の中庭の玉楠の木を横浜の歴史の証人として親しんできており、感覚としてあの絵が描かれた1854年から今までの歴史を直線的に捉えている。これも分かりやすくするためと言えばそのとおりではあるが、この横浜散歩には、横浜の歴史感覚とは相いれない違和感がある。三島由紀夫の最高傑作は、ただの個人の好みを書いただけであろうが、ペリー上陸を書かないのは、横浜の歴史の切り口としていただけない。横浜では、泊っているホテルのカードキーにまで「ペリー提督の横浜上陸(ハイネ画)」が書かれていた。

横浜開港資料館の中庭 玉楠(たまくす)の木

注 横浜開港資料館の中庭の玉楠の横には、昭和63(1988)年に横浜市教育委員会が建てた「玉楠(日米和親条約締結の地に残るタブノキ)」との碑があるが、現在の玉楠の木は、ハイネが画に描いた木からは三代目と考えられおり、位置も10メートルほど移動している。

参考文献:
堀勇良「ペリー横浜上陸の図」『開港のひろば』57号(横浜開港資料館 1997年8月)
岩野修「歴史の証人『玉楠』は三代目?」『開港のひろば』73号(横浜開港資料館 2001年8月)

中央 横浜美術館所蔵 ペルリ提督横浜上陸の図

中央 横浜美術館所蔵 ペルリ提督横浜上陸の図

「ペリー提督の横浜上陸(ハイネ画)」カードキー

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