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卒業生諸君に告ぐ

岡倉天心

 諸君既に専門の業を卒へ、一家の技を修め得て、各々美術場裡に立つ。其日夕手腕を撫して、えい脱の機会を待つや知るべきなり。然れども、錐は?中に処りて、其末始めて見る。技量ありといえども好機に会はずんば、何に因りてかえい脱を見ん。人或は曰はん、藝に遊ぶの要は道に進むにあり、製作の末技に於て何かあらんと。斯の如きは往昔岩穴の士にして始めて言ふべし。今日済世の志あるものの知る所にあらざるなり。然らば則ち、当世に美術家たるものの技量をあきらかにし、声名を揚ぐるの途如何。曰く他なし、しばしば其製作を公場に出陳して、広く江湖の鑑賞に訴ふるにあるのみ。江湖の鑑賞未だ必しも当らずといえども、世間会て一人の知己なくんばあらず。其手腕を振ふべきの機会自ら至り、造詣の妙境、亦以て期すべきなり。おもふに諸君が卒業製作はたとい美術場裡の呱声たるに過ぎずとするも、螢雪半歳、曾て経営辛苦を積みたるもの、世人の耳目に触るる、未だ遍しと謂ふべからず。是を以て去歳展覧の大会を設けて、相互競進の道を開きたり。一会の効果固より限りあり。二回三回よりして遂に数十回を重ね、益々健腕を揮ひ傑作を出すに至らずんば、如何ぞ能く諸君の声名を遠邇に馳せて、大に来請の機縁を促すに足らんや。本会ここに見る所あり。今ここ陽春四月を卜して更に陳列の公会を設け、盛に諸君の新作を蒐めて、以て公衆の観覧に供せんとす。諸君宜しく此意を体認し、今より速に経営に着手し、四月上旬を期して其製品を送致せらるべし。謂ふこと勿れ、来年を待たんと。今年豈再来の機あらんや。謂ふこと勿れ、時日既に迫れりと。十日豈一水を画き得ざらん。きょうしつ彫鏤の諸科、工程固より速ならずといえども、強ひて大作を企図するに非ざるよりは、日夕三旬の勤苦、以て優に一小品を出すに足らん。今に於て諸君に望む所は、其徒労たらんの杞憂を排して専心勇往、以て新作を試むるの一途あるのみ。但其製作たる題目をえらび、意匠を練り、勉めて凡俗の表に超脱し、能く美術の本義に副ひ、趣味の真諦に入り、以て一個の想を成し、別に生面を具へんことを期すべし。規模の大小に至りては今敢て問ふ所にあらず。其売否の如きは固より深く慮(おもんばか)るに足らざるなり。審査擬賞、亦決して其製品の大小に拘泥するものに非ざれは、諸君唯当に力に応じ時日を計りて各々其手腕を揮ふべし。各自一品以上の新作を出すを得ば則ち可なり。陽春の候、桜花雲の如く、暫く塵圜を脱するの処、諸君の製作は別に自ら一天地を開きて造化と巧を競はんとせば、其れ必ず来観の士女をして刮目せしむるに足るものあらん。則ち其都門に嘖々たる声名も亦、復た往日の比に非ざらんとす。期限遠からず、計画方に急なり。いささか所懐を述べて、出品を促すの激に代ふ。

「錦巷雑綴」
第7巻 明治29年3月30日

署名 岡倉覚三

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