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旅の本 荒野へ

 『荒野へ』は、エベレスト国際公募登山隊の遭難を描いた「空へ」の作者として著名なノンフィクション作家、登山家のジョン・クラカワーの作品で、彼の作品の中では日本で最初に翻訳出版された作品である。
 1992年9月、クリス・マッカンドレスという無名の青年が、冒険的な一人旅の末、アラスカの原野に置かれた朽ち果てたバスの中で餓死状態の遺体として発見される。クラカワーは、旅先で彼と出会った多くの人々のインタビューを通し、土地が与えてくれるものだけで生活するためクリスがアラスカの原野に置かれたバスに行き着くまでの軌跡を丹念に描いている。裕福な家庭に育ち、ジャック・ロンドン、トルストイ、ヘンリー・デイヴィド・ソロー、ジョン・ミュアを好む理想家肌のクリスは、大学を優秀な成績で卒業後、全財産を慈善団体オックスファム・アメリカに寄付し、家族の前から姿を消し旅に出る。
 この行動について、クラカワーは、両親、特にNASAの技術者として社会的には成功を収めた父親との対立を軸に、クリスの旅の理由について語っている。この「荒野へ」は、ショーン・ペンによって映画化され「イントゥ・ザ・ワイルド」というタイトルで公開中である(平成20年9月現在)。映画でも、クリスの旅の理由を、父親との対立に見出すが、どうだろうか?不仲の家族の前から姿を消すことはイコール旅ではない。人は解らないことがあると、自分の経験から答えを見つけようとする。青年期に父親との深刻な対立を経験したというクラカワーは少し、親子関係にこだわりすぎている気がする。映画の方が、本書より親子関係に関する描写が抑えてある。ベストセラー「空へ」もそうだが、本書は、クリス・マッカンドレスについて理解するというより、実は、ジョン・クラカワーについて理解する本という気がする。クラカワーの語り、視点に終始する本書に比べ、クリス本人の語り、視点(もちろん、クリス役で主演のエミール・ハーシュの視点だが)の映画の方が自然な感じはする。
 本書で語られる多くのエピソードの中でも、クリスがヒッチハイクで偶然知り合ったフランツという老人との交流にはちょっと驚く。

…あなたには、もう一度以前と同じアドバイスをさせてください。あなたは思いきってライフスタイルを変え、これまで考えてもみなかったこと、あるいはなかなか踏んぎりがつかずに躊躇していたことを大胆にはじめるべきだと思っているからです。多くの人々は恵まれない環境で暮らし、いまだにその状況を自ら率先して変えようとしていません。彼らは安全で、画一的で、保守的な生活に慣らされているからです。それらは唯一無二の心の安らぎであるかのように見えるかもしれませんが、実際、安全な将来ほど男の冒険心に有害なものはないのです。男の生きる活力の中心にあるのは冒険への情熱です。生きる喜びはあらたな体験との出会いから生まれます。したがって、たえず変化してやまない水平線をわが物にしているほど大きな喜びはありません。毎日、あたらしいべつの太陽を自分のものにできるのです。人生からもっと多くのものを得たければ、ロン、単調な安全を求めるのはやめて、最初は狂気じみて見えるようないい加減な生き方をしなければならないのです。でも、そうした生き方に慣れてくれば、その真の意味とすばらしい美しさがわかるでしょう。そんなわけで、ロン、要するに、ソールトンシティを離れて、旅に出るのです。…

 クリスがアラスカで亡くなる前に投函されたこの手紙を受け取った81歳の老人は、本当に家を出て砂地でテント生活を始めた。クリストファー・ジョンソン・マッカンドレス(Christopher Johnson McCandless)は、魅力的な青年だったのだろう。

旅の本 バックナンバー

荒野へ 表紙

bookデータ
荒野へ
INTO THE WILD
ジョン・クラカワー 著
佐宗鈴夫 訳
集英社
定価 2000円税別
ISBN 4-08-773266-5

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