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新神秘主義

岡本かの子

くう介仏供養

 くう介は自身の悪い性質を知って居た。然しそれは自分でどうとも始末出来ないものであった。で、仏供養をしてせめて後世は救はれようと思ひ立った。この為には彼は随分犠牲を払っても宜いと考へたのであった。
 彼は仏師を呼んで来た。彼は仏師に一体の仏を造ることを頼んだ。仏師は承知して謝礼の前渡しを請求した。くう介に疑ひの心が起った。仏師は礼を先取りして、実は仏の受渡しを果さぬのではないかと。くう介は礼の金包をひらめかした丈けであった。そして出来上った時引換へに金包を渡さうと約束した。
 仏師は箔の代価や塗金の代価を他から借りて所弁した。
 仏一体が出来上って来た。出来上った仏の前にくう介は自分の妻を呼び出し、共々仏師の技量を賞めそやした。それからくう介は仏師をねぎらふべく表へ食物を買ひに出た。
 彼が表から帰った時、彼は食物を持って帰る代りに、刀を引抜いて部屋へ躍り込んだのであった。そして仏師を睨み付けて云った。
『貴様は俺の留守中に、屹度俺の妻に無態を云ひかけたに違ひ無い。』仏師はほうほうの態で逃げ出した。
 くう介は自分の悪い性質をよく知って居た。自分の心中に一寸した疑ひが起った。それが仏師へのいろいろな難題の宜い種になった。くう介には仏造りへの礼金を踏み倒さうとする自分の悪企みが、自分には面の裏のやうによく判って居たのだ。それで居て自分の悪質をどうすることも出来なかった。
 妻はまた例の夫の術かと呆れて立って行ってしまった。くう介は強奪した仏の前に殊勝に合掌して頻りにお叩頭(じぎ)をした。
 木仏の眼から、はらはらと涙がこぼれた。

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読売新聞
昭和3年
9月4日〜10月2日

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