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旅の本 バンブーロッドのいま Modern Bamboo Rod Scenes

 読書の楽しみに全く知らない分野の本を読む面白さがある。

 例えば、自動車の免許を持っていない女性が(もちろんクルマに全く興味のない女性が)ドライビングテクニックの本(例えば、『ハイスピード・ドライビング』(ポール・フレール 小林彰太郎訳 二玄社)など)を読むような種類の読書の楽しみ。換言すれば、読書によって全く知らない世界を知るといった楽しみ。別に新しい世界を知ったとしても何の得にもならないけれども読書を通した知るよろこびは確実に味わうことができる。ある意味、資格を取るための勉強としての読書や教養としての読書とは180度異なる方向性の読書。
 本好きのコドモの読書は、たいがいこういった種類の読書のハズだ。旅先での読書だったらこういった読書もおすすめだ。
 ただ、全く知らない分野の本だと、本をざっとめくってその本がある程度の妥当性(正確性)を持った内容の本であるかは分からない。何らかの超自然的な啓示によって書かれた(?)トンデモ本であるかもしれない。必ずしもトンデモ本を読むことが悪いことだとも思わないが、少なくともその分野について初めて読む本をトンデモ本にしたいとは思わない。
 トンデモ本を避ける手段の一つとして、たずさわった人が多い本を読むという方法がある。例えば、翻訳された本を読むというのも一つ、著者、いれば編集者、そこに“翻訳者”と少なくともその本の出版に関係する人(その本を世に出したいと思う他者)が著者の他に確実に一人は増える(著者自身が翻訳しない限り)。他には、大手と決めてかからず好きな出版社、買った本が気に入る頻度の高い出版社を覚えておきソコの新刊はとりあえず本屋で立ち読みを含めて手にとってみる方法。好きな本屋の気に入る本が置いてある棚を覚えておき、その棚の担当者が並べる本やポップ(手書きのPOP広告)を手がかりに本を選ぶという方法もある。ただ、後者二つの方法は、出版社や本屋の棚は普通きれいに棲み分けられているので、本のジャンルとして自分の読書の傾向から大きく踏み出すことは出来ない。本好きのコドモの読書が、ジャンルに囚われず自由でその領域が広大なのは皮肉にも“コドモ向けの本”ということで最初にジャンル分けが済んでいることにあるようだ。新書ブームも“新書”というジャンルが存在する限り、根はこんなところにありそうだ(ただ、新書ブームの場合、比較的書評から本が売れることが多い。入門的な教養書や科学書でトンデモ本が紛れ込む余地が少なく、初学者向けなだけに内容の評価も簡単で手っとり早い新書を取り上げる単に書評家の怠慢という側面もあるかもしれない(それも本のタイトルが面白いという理由だけで…))。

 今回紹介する本『バンブーロッドのいま Modern Bamboo Rod Scenes』は、少なくとも48人がたずさわった700ページを超えるハンディな判型の国語辞典ほどの堂々たるサイズの本で、フライフィッシング、それも竹竿(バンブーロッド)を使用してのフライフィッシングについてだけ書かれた本である。
 ここで「?」と感じたのなら、この本を読んで全く知らない新しい世界を知るという読書の楽しみを味わうことのできる有資格者の一人といえる(もちろん、本来は「!」と感じた人に向けて書かれた本である)。
 現在、あらゆる釣りのジャンルにおいて、工場で大量生産可能なカーボン製ロッドが主流になっている。近代以降の釣り竿の歴史としては、竹→グラスファイバー→カーボンコンポジットと竿の素材は移り変り、また、この過程で規模の経済がビルダーからメーカーへ、そしてメーカーをより大きなものへと集約させたのだが、この本に登場する47人は、ハンドメイドのバンブーロッドの優位性、そして趣味性についての持論を披露する。視点や論点もバラバラ、釣る道具としての機能性の高さ、バンブーロッドでの釣りの合理性を語る人もいれば、高価なバンブーロッドのコレクション性について語る人、バンブーロッドメイキングを通して“モノ作り”を語る人、具体的なロッド制作過程の説明を挟みこみ、職業としてのバンブーロッドビルディングに辿りついた紆余曲折の自分史を語る人、休日の趣味としてのバンブーロッド作りを語る人とそれぞれの“千差万別のイズム”がこの本で披露されている。
 ここに書かれている『バンブーロッド』という単語を何か他の趣味についての単語に置き換えても意味は通じるほどの、趣味性が高いからこその主張の類型も見てとれ、悪い意味でも良い意味でもどこかで聞いたことがあるような“ありふれた主張に思える”感覚すらその行き過ぎ感とともに楽しめるものになっている。

例えば

 もし私が人にバンブーロッド・ビルディングのなにかを伝えようとするなら、その人にまず三か月くらい、バンブーロッドについての詩を書かせて、自分でなにかに気づくことを期待するでしょう。バンブーロッド・ビルディングは精神的な過程だから、教えることはできないし、人から学べないのです。

ビヤーネ・フリース

 上の一文の『バンブーロッド・ビルディング』、『バンブーロッド』の単語をあなたの好きな単語に置き換える、例えば、『ブログ更新』と『ブログ』にしたり、『リンク』や『プログラミング』の一単語にしてもシュールに意味は通じてしまう。フリース氏の考えには、行き過ぎた感じ(いっちゃった感)を受ける人もいるだろうし、稀には、詩を書くのが三か月では足りないという人もいるかもしれない。
 この本は、登場する人物を完全に五十音順で並べており「趣味の世界には、メーカーとユーザー、上も下も序列は一切無い」というこの本の編集者の誠実な編集方針を感じることができる。本書は、701ページという分量だが、聞き書きというスタイルからか、あっという間に読み終えてしまう。ちなみに、出版社の名前『渡渉舎』の“渡渉(としょう)”とは、水を歩いて渡ることである。

バンブーロッドのいま 目次

  • 道南の釣りに向いた竿を作っている 朝間紀之
  • 後世に残したい竿 天谷龍夫
  • これは、修行なのかもしれません 池田元用
  • 竹の表情を活かしたい 石田秀登
  • 竿は自分のために気楽に作りたい 大平善之
  • 友達などに竿を作り始めて六年目です 大森源一
  • 振動がスムースに収まる竿を作りたい 柏山洋之
  • カローラのような存在の竿を作り続けたい 北尾浩伸
  • バンブーロッドがフライフィッシングの面白さの核心に最も近い 工藤直巳
  • 物作りは、手際よくやったほうがいいものができるはずだ  栗原博行
  • 釣りバカ魂伝導装置 黒石真宏
  • フライロッドは、ちょっとしたことで劇的に使いやすくなる 齋藤 研
  • 好みのアクションのバンブーロッドを見つけた 佐藤 伸
  • フリース竿と羽舟竿 島崎憲司郎
  • 竹竿と水箱 角 敬裕
  • 竹の子 角 敬裕
  • 扁平六角柱入り中空竿などを作っています 竹本眞規
  • 和竿がほしい 田中啓一
  • バンブーロッドは、じょうぶに作りたい 辻林隆能
  • バンブーロッドは軽いほうがいい 手塚太一
  • フライ竿作りは、きわどいところがある 中村羽舟
  • 曲がり直しとバーニッシュ 中村羽舟×宮坂雅木
  • FIBHの面白さ 難波 陽
  • カラッと乾いた感じのシャープな竿を作りたい 野中角宏
  • 快楽主義者のための竿 野々垣洋一
  • バンブーロッドもフライフィッシングも制約があるから面白い 橋本直紀
  • 精密機器製造の技術でフェルールを作ってみた 榛木敏之
  • 釣り竿は誂えるのもいいが、自分で作るのもいい 平田真人
  • ポール・ヤングの面白さ 平野貴土
  • フライフィッシングは肉体でなく精神でやるものだ ビヤーネ・フリース
  • ビルダーの個性を味わいたい 藤原弘明
  • バンブーロッド・ビルダーは、もっと挑戦してほしい 古川広道
  • サケ釣りにもバンブーロッドがいい 古瀬 登
  • 竿は素振りしただけではわからない 前川敏之
  • ただの竹片が、突然、釣り竿になる 真下誠二
  • 悲劇が繰り返されても 増田千裕
  • バケと竹竿 松田宣広
  • いまこそがバンブーロッドの黄金期ではないか 緑川 淳
  • 雑誌に見るアメリカのバンブーロッドへの情熱 緑川 淳
  • バンブーロッドはやらないつもりでいた 宮坂雅木
  • バンブーロッドは「いまの竿」を作れる可能性がある 村田孝二郎
  • 村田ロッドのビルディングの工程 村田孝二郎
  • 竹竿作りは、すべての工程で自分の手を動かすことができるのがいい 望月清己
  • バンブーロッドと僕の関係 森村義博
  • バンブーロッド・ビルダーは、きついけれどいい仕事ではないか 山城良介
  • ひと目でバンブーロッドに惹かれた 横田 純
  • バンブーロッドは、その時代のその地域に密着したものが作れる 横山 修
  • まず、いちばん得意な竿で勝負してみたい 吉田 満
  • いつも自由な気持ちでバンブーロッドに接したい 吉田良一
  • ファッション的物作りとバンブーロッド作りはどうちがうのか 若山雅紀
  • 玩物喪志 渡辺裕一
  • 本書に登場したビルダーの作例42本 編集部
  • 本書に出てきたその他の竿14本 編集部

旅の本 バックナンバー

バンブーロッドのいま 表紙

bookデータ
バンブーロッドのいま
Modern Bamboo Rod Scenes
・ビルダー、フェルール職人、ユーザー…47人が語るバンブーロッドの現在
渡渉舎 編
著者 朝間紀之 天谷龍夫 池田元用 石田秀登 大平善之 大森源一 柏山洋之 北尾浩伸 工藤直巳 栗原博行 黒石真宏 齋藤研 佐藤伸 島崎憲司郎 角敬裕 竹本眞規 田中啓一 辻林隆能 手塚太一 中村羽舟 難波陽 野中角宏 野々垣洋一 橋本直紀 榛木敏之 平田真人 平野貴士 ビヤーネ・フリース 藤原弘明 古川広道 古瀬登 前川敏之 真下誠二 増田千裕 松田宣宏 緑川淳 宮坂雅木 村田孝二郎 望月清己 森村義博 山城良介 横田純 横山修 吉田満 吉田良一 若山雅紀 渡辺裕一
難波陽 訳
渡渉舎
定価 5800円+税
ISBN 978-4-9902599-1-4

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