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旅の本 そこにシワがあるから

 読書の楽しみに全く知らない分野の本を読む面白さがある。

 洗濯するだけでアイロンの必要がないノンアイロンシャツを初めて目にしたのはいつだったろうか。格安なワイシャツのクリーング料金で業容を拡大するクリーニングチェーンの安さの秘密が、ハンガーにかけたシャツを揺らしながら乾かしてシワを伸ばし、アイロンがけを省略することにあると知ったのはいつだっただろうか。おしゃれな人の中には、クリーニングから帰って来た時のシャツのたたみジワを嫌ってワイシャツのハンガー仕上げを好む人がいるが、上のハンガー揺らし式シワのばしでは、ハンガー仕上げでよければ、さらにシャツを折りたたむコストすら削減できる。

 「そこにシワがあるから」は、そんなアイロン受難の時代に出版された本で、エクストリーム・アイロニングについて書かれた本である。
 エクストリーム・アイロニング(究極のアイロンがけ)とは、家事の一種であるアイロンがけを家から飛び出し野外で行うスポーツで、Xゲームなどと同様のエクストリームスポーツの一種であるという。1997年イギリス人アルピニスト フィル・ショウが、自宅のバックヤードでアイロンがけをしたことがこのスポーツの起源で、2002年には第一回のエクストリーム・アイロニング世界大会がドイツのミュンヘンで開催されたという。
 エクストリーム・アイロニングは、山頂、水中など、通常のアイロンがけとはかけ離れた自然の中で行われるアイロンがけ(ネーチャーアイロニング)、サーフィン、カヌー、スカイダイビングなど他のスポーツとアイロンがけを組み合わせた(スポーツアイロニング)、決められたコース上で、アイロンがけの技術点、芸術点、タイムを競う(競技系アイロニング)の主に3つのスタイルから構成される。
 著者は、日本エクストリーム・アイロニング界のパイオニア的存在で、現役のアイロニスト(アイロンがけをする人)で、エクストリーム・アイロニングの英国本部登録の組織「エクストリーム・アイロニング・ジャパン」の創設メンバーの一人で代表者でもある。
 著者の生い立ちからはじまるエクストリーム・アイロニングの出会いまでは、著者の独特な理路整然とした考察が面白く、アイロニング技術研鑽の日々の記述は、ちょっとバカバカしく面白い。
 読みやすく楽しめる一冊であるが、一点気になるのは、著者が自分たちのアイロニングの正当性を自らが代表を務める組織(エクストリーム・アイロニング・ジャパン)に求めていることにある。門外漢にとっては、著者のアイロニングと、著者が非難するアイロニングの「究極と無謀」、「おふざけとユーモア」の差が分からない。もともと、「無謀」かどうかは自分自身が判断するもので、他者がとやかく言うことではないのではないだろうか。著者の尊敬するラインホルト・メスナーの単独無酸素8000メートル級登山なども挑戦当時は無謀とされたものの代表例ではないだろうか。その上、成功と失敗の結果論で、「無謀」をはかることも出来ない。山で亡くなったメスナーの弟が無謀だったとは別に思わない。「おふざけとユーモア」についてもただセンスの問題ではないだろうか。自分たちがエクストリーム・アイロニングの英国本部登録の組織であるから正当では、可能性溢れる新スポーツの魅力がそがれる。ルールがガチガチに固まっているサッカーの選手が、自分のプレーについてイマジネーションという言葉で語るのに対し、他者のパフォーマンスに対し自分たちの作ったガイドラインを持ちだす論法はいただけない。
 ところで、「そこにシワがあるから」は、エベレスト登山史に名を残すイギリス人登山家マロリーが「なぜ登るのか?」を問われ、答えたとされる「そこに山があるから」から付けられたタイトルと思うが、著者もエベレスト登頂、そして山頂でのネーチャーアイロニングを目標としているという。体力もある著者ならば、プレモンスーン期の国際公募隊に参加し、登頂は十分可能とは思うが、山頂にアイロンとアイロン台を持っていくことに隊につくガイドやシェルパがどう思うかが、山頂アイロニング成功の鍵にも思える。相当にコンパクトで軽量なものにしないと難しそうだ。 エベレストに行くまでに、著者が悟りの境地に達し『ソウルアイロニスト』になって山頂で目を閉じ瞑想し、イマジネーションのなかでアイロンを掛ければ、アイロンもアイロン台もいらないし、サブカル系のスポーツとしては、物質主義への反論として好ましいリアクションの一つと感じるがどうだろうか。
 実際は、セブンサミット(七大陸最高峰登頂)アイロニングを目指し、最初は、エベレストより敷居の低い山頂アイロニングで実績を積み重ねるか、まずは、エベレストのベースキャンプを訪ねるトレッキングに参加し、ベースキャンプ周辺でアイロニングするのがよいのではないだろうか。

そこにシワがあるから 目次

  • 第1章 究極のアイロン掛け-エクストリーム・アイロニング
  • はじめに
  • 基本は野外
  • ネイチャー・アイロニング-自然環境でおこなうアイロン掛け
  • スポーツ・アイロニング-スポーツに取り入れておこなうアイロン掛け
  • 競技系アイロニング
  • 発祥とその歴史
  • 第2章 エクストリーム・アイロニングとの出会い
  • 生い立ち
  • アイロン掛けとの出会い
  • 毎日の日課に
  • オーストラリア人のアイロン観
  • リアル・アウトドア生活
  • エクストリーム・アイロニングとの出会い
  • 第3章 運命の筑波山
  • 管理された自然
  • 冗談のつもりが…
  • アイロン掛けの技術が達成感を倍増する
  • 運命の筑波山
  • 第4章 エクストリームな日々
  • 試行錯誤の日々
  • エクストリーム・アイロニング・ジャパン(EIJ)の誕生
  • 道具へのこだわり
  • 電源との戦い
  • 強い精神・強い肉体
  • 富士山頂エクストリーム・アイロニング
  • 新技「エアリアル」
  • 水中アイロニング
  • 二刀流アイロニング
  • アイアン・ロータス
  • 究極と無謀の線引きを
  • 第5章 そこにシワがあるから
  • アイロンの上手な掛け方
  • 外で掛ける楽しみ
  • 自然環境への取り組み
  • チョモランマ(エベレスト)へ
  • そこにシワがあるから

旅の本 バックナンバー

表紙 No image

bookデータ
そこにシワがあるから
エクストリーム・アイロニング奮闘記
松澤等 著
早川書房
定価 1400円+税
ISBN 978-4-15-208967-0

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