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作家の知性

織田作之助

 ……善哉屋、まむし屋、浮浪人、大道易者、浄瑠璃本写本師、芸者等々、いったいお前の小説は低級極まる題材を扱っているのでいかんと、ある恐しき文学青年の会合でいわれて、私は頗る慌ててそれではどんなことを書けば高級なんですかと訊くと、彼は答えた。
「今日の日本的知性を高揚せしむるところの創造的契機たる倫理的態度をもって描写すべき時代の知性的苦悩と、観念的乃至行動的意慾を以て表現すべき新時代の方向……」
 判らなかった。
 ……知性だとか、概念だとか、観念だとか、契機だとか、まるで唾さえつければペタペタと簡単に貼りつけられる郵便切手のようなものを以て、小説を因数分解するとは、一つの進歩には違いなかろうが、往々にして料金不足になり易い。料金不足では、意余って礼節を欠く。小説家の知性とは郵便切手の蒐集ではない。現実の新解釈ではこと足りぬ。新解釈される現実とはまるで些かの相関関係もない活字を以て、現実と闘って行くというところに小説家の知性が動員されるのではなかろうか。つまり小説家の礼節は小説の機能を重んずるところにある。いうところの小説の思想とはこれ以外にあり得ない。そして批評家の役割は、先ずその小説の思想を舌の先で味わうところにある筈だが、ただ「うめえ」とか「こりゃいける」だけでは行数が足りないので、批評家は題材の因数分析に憂身をやつすのであろう。しかし、XだとかYだとかカロリーだとかヴィタミンだとか言っている内に、そそられて睡気を催して来るので、こりゃいかんと、慌てて郵便切手をなめて、終り!
 ……だろうと、私はその時ペロリと舌を出したが、しかしあとでひそかに思案するなどと、浅ましく現金だった。つまり、私が今日の所謂知性人の悩みよりも、哀れな市井の人々をわざと小説の題材に選んだのは、たぶんカロリー屋やヴィタミン屋の口吻が気に食わなかったからではなかろうかと。しかし実は以て、私は痩せている。カロリーやヴィタミンを必要とするのである。そこで私もまた、ちょっくら、今日の日本的知性を高揚せしむるところの創造的契機たる倫理的態度を以て……。

「読売新聞 夕刊」
昭和16年1月30日

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