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旅の本 素顔のイサム・ノグチ:日米54人の証言

イサム・ノグチ庭園美術館近くの遊具

 誰であれミシュランガイドについて書いたり、語ったたりすると安っぽい人物に見えるものである。ガイドを褒めても、貶してもその安っぽさに差は生じない。何であれガイドが必要な人物が、そのガイドについて批評するのはごく稀なケースだ(書いてある情報を持ち合わせていないからガイドを買うわけでその情報について批評することは普通出来ない)。安っぽい人物に見えるのは、自分にとって必要でもないガイドについて語るお節介なところや、本来、不要なところから生じたその論の矮小な視点が安っぽさの原因かもしれない。なぜこんなことを書くのか、といえば、これからこのガイドにちょっと触れるからだ(このガイドは触れたもの全てを安っぽく見せるという厄介な性質を持っている。)。

 ミシュランガイドの星というのは、『遠回りをしても食べる価値あり(2つ星)』、『寄り道しても食べる価値あり(1つ星)』(たぶん)というようにアプリオリにガイド読者の旅行のスケジュールに影響を与える仕組みとなっている。かっこして“たぶん”と書いたとおり、前の文章が正しいかどうかわからない。こんな感じだったよなァと思いながらこれを書いている。ある種の芸術家とその作品も、『遠回り』や『寄り道』といった要素で旅行のスケジュールに影響を与える引力をもっている。
 私にとってイサム・ノグチはそんな作家の一人だ。ここで、ミシュランガイドの基準に当てはめ「星いくつか?」は別に書かない。
 今回、紹介する『素顔のイサム・ノグチ:日米54人の証言』は、高松にあるイサム・ノグチ庭園美術館の開館3周年を記念して2002年に出版された本で、もともと、四国のローカル新聞に連載されていた記事をまとめて一冊の本にしてある。日米をまたにかけて活躍したノグチの本らしく、日本語と英語によるバイリンガルブックとなっている。内容は、副題のとおり、ノグチと面識のあった54人がだいたい1人2ページほどで、それぞれのノグチとのエピソードを語っている。この本を読んでみると、一人一人がバラバラにノグチを語っているので、本全体がまるでモザイクのようで、はじめもなければ終わりもなく、全体に何らかの方向性や意図もないので、何度読んでも読み終えたという感じがしない。また、この本の1篇2ページの分量は、陳腐な方向に流れがちな作家論を書くことを許しておらず全体的に退屈しない。54篇の中では、他で引用される機会の多いであろう、巨匠のエピソードぽさが強く漂う柳澤伯夫氏の「眼を閉じる東洋の街並み」などより、女性の書いたノグチについての文章が面白かった。
 巻末(本の真ん中あたり)に、年譜などとともに日本国内の作品リストも載せられている。この本を国内旅行に持っていくと、退屈はしないことはもちろん、旅行前には考えてもいなかった『遠回り』や『寄り道』を生み出すかもしれない。

素顔のイサム・ノグチ:日米54人の証言
Isamu Noguchi, Human aspect as a contemporary:
54 witnesses in Japan and America

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  • 乾由明  凝縮した自然へと昇華
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  • 石井修  素材生かし自在に創作
  • Osamu Ishii Total Command of the Material and Its Characteristic
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  • Thomas M. Messer A Man Hard to Please,Yet Charming and Tolerant
  • ショージ・サダオ  「アルミ」に彫刻家の閃き
  • Shoji Sadao The Sculptor's Genius Sparks at "Aluminum"
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旅の本 バックナンバー

表紙 No image

bookデータ
素顔のイサム・ノグチ:
日米54人の証言
四国新聞社 編
定価 3200円税別
ISBN 4-86024-009-XC0095

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