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ダ・ヴィンチの手帳

めざせポケモンマスター!!2010 東京駅ゴール

ポケモン・スタンプラリー めざせポケモンマスター!!2010 東京駅ゴール

『神々の復活』にでてくるダ・ヴィンチは、もちろん、よくしられているとおりの万能の天才である。しかし、この天才には奇妙なくせがあった。ポケットに手帳をもっていて、なんでもかでも、やたらにそれにかきこむのである。町をあるいていて、であった人の顔の特徴をかきこむ。お弟子がかいものにいってかえってくると、いちいち品物の値段をきいて、かきこむ。まったく、なんの役にもたちそうもないことまで、こくめいにかきこむのである(注)。
 高校生だったわたしには、この偉大な天才の全容は、とうてい理解できなかったけれど、かれの精神の偉大さと、かれがその手帳になんでもかでもかきこむこととのあいだには、たしかに関係があると、わたしは理解したのである。それでわたしは、ダ・ヴィンチの偉大なる精神にみずからをちかづけるために、わたしもまた手帳をつけることにした。
『知的生産の技術』梅棹忠夫 22ページ

注 『神々の復活』は、『知的生産の技術』を書く二〇年以上もまえ、うめさおさんが高校生時代に読んだ本で、作者のメレシコフスキーがどの程度史実にもとづいてこの小説を書いたか分からず、本当にダ・ヴィンチが手帳を書いていたかも分からないという。

ダ・ヴィンチの手帳の価値(かち)

 実は、学校の国語教育での『作文』は、深いことを書くことは求められていない。遠足に行って、帰ってきてから授業中に数時間で、原稿用紙を前に、ウンウンうなって書きあげる。本質的に『時間内に書くことが大切。』で、わたしの記憶では、図書館に行って、資料を調べながら書いたことはなかった。

 今年の5月15日、わたしたち○○小学校○年生は、○○に遠足に行きました…

 いつ、どこで、だれが、なにを、どうしたからはじまり。それに続いて「楽しかった。」「○○が大きかった。」「わたしは○○と思う。」といったことを書く。『自分が感じたことを書く。』、『自分の考えを書く。』といえば聞こえはいいが、「遠足」と「作文」の関係を、例えば、新聞の編集作業に置き換えて「取材」と「記事」に例えてみれば、ずいぶんとかんたんに記事を書いていると感じないだろうか?
 どうせ、作文を書くのだからと遠足中は作文で書くネタをさがしながら歩いたという記憶は自分自身ないし、そんな友達もいなかった。また、遠足中そんなことを考えていたらつまらなそうだ。遠足が取材とすれば、ぼんやりとすごして、国語の授業でなんとなく思い出したことをテーマに書いていた。
 もちろん、文を書く練習だからそれでいいのかもしれない。ただ、作文がじょうずなことと、良い文を書くことは少しちがうような気がする。

 うめさおさんの言うダ・ヴィンチの手帳は、なんでも、その場で、気がついたことを書く。そこには数字や物の名前が記録される。ネタをさがすということとはちがう。もっと自然体で、国語というより理科の観察日記(かんさつにっき)に近い。ただ、理科の観察日記とちがうのは、書く内容が一見するとなんの役にもたちそうもないことを、たくさん書くということにある。理科のあさがおの観察日記は、普通は、その日の天気、気温、水を何回やったかなどを記録する。あさがおが、種から育っていくことに関係ありそうな(役に立つ)こと、日光や水などを毎日順番に記録する。ダ・ヴィンチのやりかたでは、あさがおの生育はいっさい関係ない。例えば、植木鉢(うえきばち)の形とサイズが手帳に記録される。自分の植木鉢、友達の植木鉢、クラス全員の植木鉢を手当たり次第に記録する。全部しらべた後に、何かを発見するかもしれないし、発見しないかもしれない。次の年、一年下の下級生達の植木鉢を見て、自分が書いた手帳の記録と見比べて何かを大発見をするかもしれない。
 もしも、ダ・ヴィンチの手帳(なんの役にもたちそうもないことをたくさん記録して)から、何かの法則性や関係を発見してそれを記事(作文の題材)に出来たなら、それが本当の良い文なのではないだろうか。

インターネット上の情報

 インターネット上には、たくさんの情報がある。でも、似たような情報も多い。
 例えば、「山手線のJR目黒駅の改札口のうち、スイカ・パスモ(ICカード)専用改札口の数は何個か?その内、出口専用は何個か?」この答えはたぶんインターネット上では見つからない。インターネットで調べても分からないことでも、目黒駅に出かけてみればすぐに分かる。なぜか?
 JRの会社の人以外には「まったく、なんの役にもたちそうもないこと」だから、だれも調べない。「なんの役にもたちそうもないこと」だからインターネットにもだれも書かない。ダ・ヴィンチの手帳とは、このなんの役にもたちそうもないことを書く手帳である。
 山手線全部の駅のそれぞれスイカ・パスモ(ICカード)専用改札口の数は何個か、その内、出口専用は何個か、これをすべて調べてみたら何かを発見するかもしれないし、駅員さんに「なぜICカード専用改札口が○個なのか?」を聞いてみたら、何かのわけが分かるかもしれないし、やはり分からないかもしれない。

旅行に手帳を持って行こう

 高校生のうめさおさんは、手帳を書くことでダ・ヴィンチに近づいた気がした。ダ・ヴィンチの旺盛な好奇心、それがそのまま表れた何でもかきこむ手帳に、うめさおさんはダ・ヴィンチの天才を読みとった。
 今年の夏休みの旅行には、一冊手帳を持って行こう。なんでもかでも、目についたこと、気になることをやたらにそれにかきこんでみよう。
 手帳に書くのは、ポケモンスタンプラリーの途中でも、お父さんの運転するクルマの後ろのシートでも、電車に乗っていてもいつでもどこでもできる。とにかく書いてみよう。

ダ・ヴィンチの手帳の書き方

 うめさおさんが、実際手帳に書いたのはダ・ヴィンチとはちがって「発見」だった。

 まいにちの経験のなかで、なにかの意味で、これはおもしろいとおもった現象を記述するのである。あるいは、自分の着想を記録するのである。それも、心おぼえのために、みじかい単語やフレーズをかいておくというのではなく、ちゃんとした文章でかくのである。ある意味では、それはそのままでちいさな論文−ないしは論文の草稿−となりうるような性質のものであった。
『知的生産の技術』梅棹忠夫 24ページ

 うめさおさんは、その手帳を『発見の手帳』と名付けた。あくまで、みなさんには、うめさおさんのようにちゃんとした文章ではなく、短い単語やフレーズ、数字を書くことをすすめたい。りゆうとして、一つは、うめさおさんが手帳を書きはじめたのが、みなさんより(たぶん)大人の高校生だったということ。もう一つは、旅行中に、ちゃんとした文章を書こうとすれば、それに気をとられて目の前にあることへの集中力がそがれて、せっかくの旅行をつまらないものにしてしまいかねないことがある。「ダ・ヴィンチの手帳」とうめさおさんの「発見の手帳」の差は大きい。役にたつかどうかも考えずに、短い単語や数字を書くだけならばそれに気が取られる心配はない。主な目的、主役は、旅。あくまで手帳はわき役にしよう。

発見の手法

 ダ・ヴィンチの手帳は、なんの役にもたちそうもないことまでを書きこむ。役にたつかわからないメモは、やっぱりなんの役にもたたない可能性が高い。
 理科の授業では、実験前、結果を予想してみる。仮定、仮説が先にあり、その説が正しいかどうかを証明するために実験をする。書き出してみると

 仮定・仮説の立案→仮説の検証(実験・観察など)→法則・理論の発見

 という順番になる。
 先に書いた、あさがおの観察の例では、日光と水はあさがおの生育に必要という仮説をもとに観察をしている。ダ・ヴィンチの手帳は、観察の一種と言えるが、先に仮定、仮説といったものがない上、手当たり次第に記録をしただけなので、そのなかから何かを発見するのはむずかしい。
 何かを発見するカギは、『ひらめき』にありそうだが、発見の可能性を上げることはできる。そのためには、

 同じもの、同じグループのものをたくさん調べて書く。
 人にも聞いてみる。
 他の情報と付き合せてみる。

 などの方法がある。
 例えば、自分が書いたダ・ヴィンチの手帳と同じ内容の情報がインターネットにあるか調べてみよう。検索して出てきた情報は何年も前の情報かもしれないし、こんなことすらインターネット上に情報として無いのかと思うかもしれない。思った以上に情報が少なくて何でも書いてあると感じていたインターネット上の情報に心細さを感じるかもしれないし、逆に、考えている以上にインターネット上の情報は幅広いと感じるかもしれない。
 自分で調べてみないとこの答え、インターネットの情報の深さと幅はわからない。

世界は発見に満ちている

 昔の探検家は、誰も行ったことのないところに行くということが目標だった(代表例としてヒラリー、テンジンのエベレスト初登頂(1953年)など)。世界中が探検しつくされると、難しい方法で行くということが目標になった(メスナーの無酸素、単独エベレスト登頂(1979年)など)。
 誰も行ったことのないところに行っても、難しい方法で行ったとしても、何も発見されないことも多い。新しい発見をするためには、誰も行ったことのないところに行く必要はない。
 今年の夏休みの旅行には手帳を一冊持って行ってみよう。必ずしも何かを発見できるとは限らないが、ポケットに手帳を持って旅をしよう…

 今は、こんなつまらないことと思うかもしれないが、目に付いたこと、気になることにはセンスの差が出る。手帳をとっておいて10年後、20年後に見直せば必ず楽しめるハズだ。

レオナルド・ダ・ヴィンチ
Leonardo da Vinci
1452〜1519 イタリアフィレンツェ西方ヴィンチ生れ。イタリア・ルネサンス期の画家、建築家、彫刻家、科学者。絵画の代表作に「モナ・リザ」「最後の晩餐」など

梅棹忠夫
うめさお ただお
1920〜2010 昭和−平成期の民俗学者、文化人類学者。京都生まれ。著作に『文明の生態史観序説』(1957),『日本探検』(1960),『知的生産の技術』(1969)など

メレシコフスキー
Dmitrii S. Merezhkovskii
1865〜1941 ロシア ペテルブルグ生まれ。作家、詩人、文芸評論家。

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